クロールの動作解析と陸上トレーニング
どれ程の水泳選手がタイムを上げる為にウエイトトレーニング(陸トレ)を取り入れているだろうか?
陸上で行う腹筋運動やマシーントレーニングも実際の泳ぎで使う筋肉、関節角度、体勢、スピード(特異性の原則)を考慮しないと、折角のウエイトトレーニングが無駄になってしまう可能性があります。
例えば、クロールのキック力を上げる為にレッグプレスやレッグカール、レッグエクステンションで鍛える、これらの筋力トレーニングではフラッターキック(バタ足)との体勢も、運動パターンも異なるので推進力アップにならない可能性が高いのです。
フラッターキックで最も推進力を得る局面のダウンキックでは、主に、体幹の安定性と股関節屈曲筋(腸腰筋)、膝関節伸展筋(大腿四頭筋)の連鎖したパワーが必要になります。
つまりダウンキックの推進力を上げる為には、単関節運動のレッグエクステンションではなく、これらの筋肉を連動(協調)させて鍛える事が求められます。
また、アッパーキックでは股関節伸筋(大臀筋とハムストリングス)のパワーが必要になりますが、正面からの水の抵抗を減らす為に膝を曲げない事が重要です。つまり膝関節屈筋運動のレッグカールは、水泳では全く使われない筋の動きなのです。(むしろ膝を曲げない為の伸張性収縮のハムストリングと、スタートとターンで必要な股関節伸筋の、爆発的な瞬発力が必要になります。)
また、足の甲に溜まった水のボール(負圧)を上手く後方に蹴り出す為には、つま先を伸ばした柔らかい足首のスナップが欠かせませんが、この長時間の足関節底屈状態は、ふくらはぎの機能亢進を生み、水泳選手に多い足関節内反の姿勢変位の原因になり、内反捻挫しやすくなります。
これを防ぐには足関節背屈(前脛骨筋)トレーニングで、下腿の筋バランスを整えておく事が、怪我の発生率を減らす事に繋がります。
これらの原則から、水中での前面からの圧力抵抗の少ない水平姿勢を保つには、仰向けのカールアップやクランチではなく、うつ伏せのプランク系で肩と股関節の安定性を高めながら、体幹を支える腹筋群を鍛える事が、水中での姿勢安定力向上に機能するトレーニングと言えるでしょう。
KOKEN
次回は、短距離(100m以下)と中、長距離選手(200m以上)に求められるトレーニングプログラムの違いを、筋繊維タイプと生体エネルギー論の観点から解析します。
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