ベンチプレスと肩の故障

ウエイトトレーニングのビック3と呼ばれるベンチプレス。

他のスクワットとデットリフトをしておけばとりあえずOKなどと言う考えは、私の見解からするとNGだ。ベンチプレス(プッシュ系)とローイング(プル系)は同回数行う事が、肩の障害を予防する為にも強く推奨される。

大胸筋と広背筋の機能亢進は肩甲骨を外転させ、上腕骨が前方に移動した巻き肩や猫背を生み出す。この肩や腕の前方変位は、肩の正常なバイオメカニクス(力学関係)を狂わせる。

詳しく説明すると、肩が前に移動する事で、本来は腕の重みを支えない棘上筋が上腕骨を支える力FP2を発生させる、すると棘上筋はオーバーユースとなり、疲労し、本来の棘上筋の機能を発揮できなくなり、ケガや肩が上がらなくなったりする。するとトレーニー達は慌ててローテーターカフのトレーニングをしだすが、根本的な姿勢の問題や偏ったトレーニングプログラムの見直しを前に症状の改善は難しいだろう。

ベンチプレスで大胸筋を鍛えれば鍛えるほど、肩甲骨を背骨に引き寄せる為の菱形筋や、脊柱起立筋上部の強いパワーが必要になる、これは猫背の予防でもあり、バストアップにも重要である。

”垂れた乳”を直したいとベンチプレスに夢中になっていた知人がいたが、大胸筋の機能亢進は猫背を生み、胸部が縮み、余計に下がってしまう事を知らなかったのだろう。大胸筋はもともと機能亢進しやすい姿勢筋でストレッチが大切であり、女性や男性トレーニーにもロウイングやインバーテッドロウで胸を張る為の筋肉を鍛える事をいつもアドバイスしている。ベンチプレスとローイングを飛ばしたラットプルダウン(又はチンアップ)の組み合わせでは、ダブルで肩甲骨を外転位に引くので猫背になるのも時間の問題だろう。

医道の日本社 図解姿勢検査法より図を借用

プッシュアップやプローンショルダーサーキットでベンチプレスでは鍛えられない肩甲骨周辺筋の安定性を高めておく事も、ローテーターカフの機能を引き出しておく為に大切だろう。

  • TRXプッシュアップやスタビリティボールプッシュアップで肩(肩甲骨)の安定性を強化しローテーターカフの土台を作る。
  • インバーテッドロウ  仰臥位でプル動作を行う事でベンチプレスの拮抗筋を完璧に鍛える事が出来る。

ビック3のベンチプレスに反対している訳ではないが、故障を防いだり、理想姿勢を保つには筋バランスが重要であり、それには一部の筋肉に偏る事なく、バランスの取れたトレーニングプログラムをする事が大切である。


次回は、この筋の代償運動を正し、本来持つ身体機能を回復させる仕組みを、神経筋トレーニングと共にご紹介します。

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身体機能を覚醒させろ

理想的な姿勢に整え、身体機能を高めていくエクササイズをご紹介しています。 KOKEN

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